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任意整理の処理基準

任意整理の処理基準は、長年月の先達である法律家の努力の積み重ねにより確立された実務の到達点を安易な妥協によって後退させてはならないという観点から、弁護士会など公的な立場において基準を確認することにより、一部の強硬な債権者に対しても理解を得られやすくする目的で作成されるようになったものである。最近では、この処理基準に従わないずさんな任意整理を行うことは、弁護士の誠実義務に違反するものであるとする判例も出されており(東京地決平一一・三・一〇消費者法ニュース四○号九一頁など)、任意整理を扱う弁護士には、この処理基準に則って手続きを行う義務が存すると認識されるようになった。

(1)弁護士会における基準
東京三弁護士会がクレサラ相談の統一窓口を設けるに当たって定めたのが、一九九六(平成八)年七月の「クレジット・サラ金処理の東京三弁護士会統一基準」であった。これが二〇〇〇(平成一二)年四月に改訂され、左記のような内容となっている。

①当初の取引よりすべての取引経過の開示を求めること。
②利息制限法の利率によって元本充当計算を行い債権額を確定すること。確定時は債務者の最終取引日を基準にする。
③和解案の提示に当たっては、それまでの遅延損害金、ならびに将来の利息は付けないこと。
④クレジット会社の立替代金債権額の確定に当たっては、手数料を差し引いた商品代金額を元本として貸金債務と同様の引き直し計算を行った場合の残元本を上限とすること。
⑤同一系列の保証会社の求償債権は、本来の貸金債権額まで減額すること。
⑥非弁提携弁護士による和解について利息制限法違反をチェックすること。
同様の基準(特に①から③の基準)は、全国の弁護士会においても、法律相談セッターにおける受任事件処理基準等の形で制定されるようになっており、全国的に普及している。

(2)日弁連における統一基準の採択
日弁連消費者問題対策委員会と公設事務所・法律相談センター委員会の共催で毎年開かれている「多重債務者救済事業拡大に関する協議会」で二〇〇〇(平成一二)年六月三日に左記の基準が採択された。
①取引経過の開示
取引開始時点からのすべての取引経過の開示を求めること。
②残元本の確定
利息制限法所定の制限利率によって元本充当計算を行い、最終取引日における元本を確定すること。
③残元本のみを対象とする弁済案の提示
弁済案の提示に当たっては、それまでの遅延損害金や将来利息をつけないこと。
全国の弁護士会で確認されている基準が日弁連の協議会の場で改めて確認されたことの意味は大きい。