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債務者の収支および財産状況聴き取りについて

債務者の収支および財産状況については、客観的な資料で確認する必要がある。多重債務者の中には、破産や個人再生を避けたい一心から収支・財産状況を粉飾して申告する者も多いからである。給与明細や決算書類などを確認することは不可欠である。親族などの援助により一括払いをするケースでは、親族による資金準備が確実であるかの確認も重要である。債務者が安定した企業や官公署に勤務しているか否か、差押えが容易な資産がないかという点は、債権者との間で強い立場で交渉できるか否かを判断するのに重要な事実である。

収支および財産状況の確認に当たっては、同居家族とともに聴取を行うとより客観的になるので、できれば同居家族に同席してもらうようにする。以上のような聴き取りの結果として、まず、利息制限法に引き直した場合、債務額がどの程度となるかの予想を立てる。これは、多分に経験に頼らざるを得ない作業である。そして、予想した債務額をおおむね三年で分割した場合の月々の支払額を算出する。一部に過払金返還請求が可能な業者がある場合には、その返還見通しを考慮して、債務額を算出することになる。

過払金を任意に返還しない業者については、訴訟を提起することになり、返還まで長期間を要することになるので、いったん過払金額を除外した金額での分割払いを検討することが必要になることもある。もっとも、六ヵ月から一年程度であれば、過払金返還まで業者に対する返済計画案の提示を遅らせることもやむを得ないと思われるので(本来任意に返還すべき過払金を返還しない業者がいるために返済計画案が提示できないのであり、それは業者全体の問題であるといえるし、先に残額のある業者に対する返済計画案を提示するのは、債務者にとって負担が大きいからである)、できる限り過払金返還を考慮に入れた残額での返済計画案を立てるのがよい。

こうして債務残額が、債務者の収支や財産状況によって判断した月々の支払可能額の範囲内である場合には、分割払いの任意整理を行うことを決定する。月々の支払額が支払可能額より多くなる場合には、支払期間を四年あるいは五年に延ばすことも考えるが、それだけ示談は成立しにくくなり、遂行可能性も低くなるので、個人再生手続きないし自己破産申立ても検討する。一括払いの場合には、単純に、予想した債務額を確実に準備することができるか否かを債務者ないし資金提供者に十分に確認する。こうして任意整理が実行可能と判断すると、分割払い、一括払いそれぞれに応じた内容の示談案を債権者に示していくことになるのである。