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任意整理の基本理念

一口に任意整理といっても、債権者一社だけのケースから数十社のケースまであり、また貸金業者だけでなく、信販会社、銀行、ヤミ金融、個人まで多様な債権者を含む場合があるので、一律に論ずることは難しいが、貸金業者やカード会社が大半を占める多重債務者の事例を念頭において説明していく。なお、過払金の不当利得返還請求に特有の問題は、あとで詳細に論じる。任意整理は、理屈からいえば債務者本人が行うことも可能だが、現実には、貸金業者・カード会社は取引履歴開示請求には応じるが、債務者本人による示談提示には容易に応じないので、弁護士または司法書士に委任して行われるのが一般的である。司法書士の場合、特別研修を修了して法務大臣の認定を受けた司法書士であれば、一四〇万円を超えない範囲内で代理人として相手方と直接交渉し、裁判外の和解を成立させることができるので、一件について一四〇万円を超えない範囲での任意整理を取り扱うことができる。

(1)任意整理の基本理念
①消費者の場合
消費者における任意整理の基本理念は「生活再建」である。貧困や失業・病気、浪費や法的知識の不足等のために借金を抱え、多重債務に陥った消費者が、法律家のカウンセリングによってその原因を見つめ直した上で、支払可能な限度での返済計画を立て、全債権者との間で示談を成立させることで経済的な安定を取り戻し、今後の計画的・自立的な生活を決意して、「生活再建」を実現するために任意整理を行うのである。この理念のゆえに、旧貸金業規制法四三条一項の要件の充足いかんにかかわらず利息制限法に基づいて債務残額を算出することや、経過利息・将来利息を付さないことが法的にも合理化・正当化されるのである。

②自営業者の場合
自営業者の場合は、純粋に経済的な意味での「経営再建」のために任意整理を行うことになる。高金利借入れ体質から脱却して健全な資金繰りを回復し、確実なビジョンの下に収支見通しを立てられるようにすることが最大の目標である。ただ、借入れに当たって親族や知人を数多く連帯保証人や担保提供者として巻き込んでいるのも自営業者の特徴であり、任意整理に当たっては、親族や知人らの被害を最小限に抑えるために、連帯保証人からも委任を受け、その協力を得ながら手続きを進めていかなければならない場合が多い。また、地場のサラ金や街金融、システム金融に手を出しているようなケースでは、経営再建には手遅れとなっている場合が多く、早期に現在の経営に見切りを付けて、廃業の決断を勧めることも必要な場合がある。

③任意整理のカウンセリング
任意整理の法律相談は、多重債務者の生活歴・経営歴や業者の類型・取引の経過などに応じて多重債務の原因を分析しながら、相談者の経済的状態、社会的状態、心理的状態を総合的に観察、検討して対応する必要がある。第一義的には法的知識の提供(主として利息制限法や貸金業法の知識の提供)と解決ルートの提示が中心であるが、返済計画の確実な実施のためには、家計収支のチェック、就業指導、生活保護等公的援助制度の説明などが必要となる。また、多重債務者は、多くの場合、社会的・家庭的に孤立し、先行きに不安を抱えており、場合によってはうつ状態になっている場合もある。多重債務者のカウンセリングに当たっては、常に受容的態度で接し、相談者が自己肯定感を持てるように対応するとともに、うつ状態にある相談者に対しては、叱ったり、励ましたり、焦らせたりせず、待つ姿勢で臨むことが肝要である。ギャンブル依存症、アルコール依存症などの依存症状態にある多重債務者については、自助グループとの連携も考えながら、信頼関係形成の過程で問題点の自覚を促していくことが必要である。

任意整理と個人再生

(1)任意整理とは
任意整理は、債務者の支払困難または支払不能の場合に、複数の債権者との間で集団的に、支払総額、支払方法、条件等を交渉して示談を成立させる手続きである。体系的な根拠法令は存しないが、一九八〇(昭和五五)年前後から、利息制限法、貸金業規制法などを活用しながら行われてきた弁護士による貸金業者との交渉手法がノウハウとして積み重ねられ、次第に体系化されて、判例上も一定の拘束力が承認されるようになったものである。

判例上、任意整理手続きに対する妨害行為が不法行為とされ、債権者による仮差押えや訴訟上の請求を否定する判例も出されるようになったことから、債権者には任意整理手続きに協力する義務が存するという認識が定着しつつある。一口に任意整理といっても、債権者一社だけのケースから数十社のケースまであり、また貸金業者だけでなく、信販会社、銀行、ヤミ金融、個人まで多様な債権者を含む場合があるので、一律に論ずることは難しいが、貸金業者やカード会社が大半を占める多重債務者の事例を念頭において説明していく。

なお、過払金の不当利得返還請求に特有の問題は、あとで詳細に論じる。任意整理は、理屈からいえば債務者本人が行うことも可能だが、現実には、貸金業者・カード会社は取引履歴開示請求には応じるが、債務者本人による示談提示には容易に応じないので、弁護士または司法書士に委任して行われるのが一般的である。司法書士の場合、特別研修を修了して法務大臣の認定を受けた司法書士であれば、一四〇万円を超えない範囲内で代理人として相手方と直接交渉し、裁判外の和解を成立させることができるので、一件について一四〇万円を超えない範囲での任意整理を取り扱うことができる。

(2)個人再生
自己破産不適合で個人再生が考慮対象となったものについても、個人再生の要件に合致しないもの(負債額五千万円超等)は、個人再生は使えず、費用があれば通常再生、なければ任意整理(支払型は多分無理なので、不払型)ということになる。個人再生でもやはり職場に居づらくなるというなら個人再生は使えず、任意整理または勤務先からの借金を完済後、自己破産または個人再生の申立てとなる。負債総額が一〇〇万円以下の場合は、個人再生による減免のメリットはないから、任意整理(支払型)が考えられる。しかし減免ができなくとも、個人再生を使えば三~五年間の分割払いにはできるので、分割払内容の点で合意ができないときは、個人再生を使うメリットはある。

(3)任意整理(支払型、不払型)
任意整理(支払型、不払型)は、自己破産や個人再生が適合的でない場合に使うことを考える。取り戻した過払金や親族等の援助を原資として、減額一括払いの任意整理を行うことがあるが、いきなり任意整理を行うより、個人再生の再生計画で相当額の減免を得た後、繰上償還をした方が、債務者に有利で公平な解決を図れる。

(4)特定調停
任意整理(支払型)を利用する代わりに特定調停を利用することが考えられる。

自己破産とは

債権者への支払を含めた経済的負担が最も少なく、早期に債務整理を完了する手続きとしては、原則として自己破産が一番である。自己破産で不都合がない限り、自己破産を選択する。自己破産が不都合な場合として、①資格制限のために失職してしまう、②勤務先が債権者となっていて、破産すると裁判所から勤務先に破産手続開始通知が送られて破産の事実が勤務先にわかってしまい、職場に居づらくなる、③住宅ローンを負っている自宅を維持したい、④破産はとにかくイヤだ(破産では生活再建の意欲が湧かない)と債務者自身が強く思っている、⑤免責不許可事由がある、⑥非免責債権がある、⑦自己破産の費用もない、というような例がよくあげられる。

今後の収入の中から、ある程度(個人再生となった場合の最低弁済額)。の支払が可能な場合は、①、②、③、④、⑤については個人再生の選択が考えられる。②については、個人再生の場合も、裁判所から勤務先に通知がいくし、勤務先の債権もカットされることになるので、職場に居づらくなることは自己破産とあまり変わりがないが、勤務先によっては、破産は否定的だが、個人再生ならよし、というところもあるかもしれず、その場合は、個人再生の選択が考えられる。③は、個人再生の住宅ローン特則付申立てがまさにぴったりである。

④は、今後の収入からの支払が可能なら個人再生だが、支払が不可能なら、不払型の任意整理である。⑤は、現状では裁量免責の運用により、よほどひどくなければ免責許可となるので、⑤だけで自己破産を避ける理由には乏しい。⑥は、個人再生でも非減免債権があるので、費用があるなら通常再生を考え、なければ、自己破産免責または個人再生により、非免責(非減免)債権を除く債権を免責ないし減免してから、非免責(非減免)債権について任意整理を考える。

この場合の任意整理は、非免責(非減免)債権制度の立法趣旨からすれば、可能な限り支払型とすべきであろう。⑦は、不払型の任意整理である。ところで、⑧個人再生を選択したとした場合の最低弁済額が清算価値(破産となった場合の配当することができる金額)となる事案については、経済的負担は個人再生と自己破産とほぼ同じ(違いは、弁護士費用や実費の額であろうが、手続選択の方針を左右するほどの違いではない)なので、個人再生の要件を満たすのならば、一般には、自己破産より個人再生を選択した方がよいであろう。

任意整理とは

任意整理は、裁判所を利用しない債務整理の総称であり、大別すれば、債務を支払う内容のものと、債務を支払わない内容のものがある。

(1)支払型(分割払型、一括払型)
多重債務者の任意整理の基本は、クレジット・サラ金業者の主張する残債権を、利息制限法引直計算によって、法律上正当な債権額まで減縮し、これを分割払いとする和解案を作成し、各業者に提示して個別に承諾をとっていく、というものである。弁護士による任意整理実務の長い奮闘により、現在では多くの業者が、「利息制限法引直後残元本の分割払い」という和解案に同意するが、少数ながら抵抗を示す業者も、たまにはいる。分割払いの場合には、利息制限法引直後の残元本を割り込む和解をすることは困難であるが、一括払いの場合は、ある程度可能である。

一括払いの場合の原資として、昨今は過払金が大きな役割を果たしている。そうした過払金がないときは、親族等が一時立て替え、債務者は後で、その親族等に分割払いで返還するという事案もみられる。減額一括払型和解提案に対し、業者の対応は、かなり協力的なところから非協力的なものまで、相当わかれる。分割払いの任意整理は個人再生と比べて、利息制限法引直後残元本を超える債権カットは困難であること、およびあくまで不同意を唱える業者に同意を強制する手段はないことが最大の短所であるが、裁判上の手続きではないので、柔軟な方法が可能であること(ただし、公正と平等に反した無原則なやり方をすると、信頼を失い結局は失敗することになるので注意が必要)および官報公告されることもないので秘密裡に行うことができることが長所といえる。

(2)不払型(「債務免除要請及び消滅時効待ち」)
不払型の任意整理として、債権者に対し、「債務免除要請及び消滅時効待ちサの通知をして頑張る、という方法がある。頑張る前提として、債務者への直接取立てを防ぐ手段を講じている(弁護士司法書士が債務整理の代理人となっている)こと、および債務者には差押えを受けるような資産はなく、給与差押えを受けないために、勤務先も債権者に知られていないことが必要である。自己破産は一定の不利益負担を被るところ、その不利益負担を避ける場合に、この方法は使われる。多重債務者にとって債務整理とは、生活再建の道を歩むために合法的に債務を消滅させることであり、「債務免除要請及び消滅時効待ち」の方針も、これに含まれる。

現状では、債務免除要請だけでは、これに応じる業者はほとんどいないので(正確には、法律上の債務免除をする業者はほとんどいないが、取立てをあきらめて、事実上の債務免除をする業者はかなりいる)、債務免除要請を拒否された場合のいわば予備的提案として、これとあわせて同時に消滅時効待ちを通知しておくのが便宜である。わざわざ、消滅時効待ちを通知しなくとも、消滅時効期間が満了すれば、時効援用は可能であるが、何も提案しないと、「債務整理の受任通知を出したきり何もしない」という誤解を与えるとよくないという考慮と、公正な手続きの観点から、「債務免除要請及び消滅時効待ち」の方針を提示するのがよい。

債務者の意向や事案の内容により、「債務免除要請」は厚かましく思える場合や、あるいは「どうせ債務免除要請は受け容れられないだろう」と思われる場合は、単に「消滅時効待ち」の通知だけでもよい。この方針に不満な債権者は、提訴して時効中断を図るが、多くの債権者は費用対効果の計算により提訴はしない。判決をとられてもさらに一〇年間頑張る。再中断があっても同じである。この方針は、解決まで時間がかかるのが難点である(早期の債務整理を望むのならば、他の手続きを選択すべきである)が、この間債務者が無資力状態の場合は、実害はない。もし、債務者が有資力状態となる見込みが出てきたり、財産開示手続き(民執第四章)によって勤務先が債権者に知られる等の事情変化があったら、その段階で自己破産に切り換えることを考慮することになる。

特定調停とは

特定調停は、話し合い解決のための裁判所の手続きである民事調停の特則の手続きである。多重債務の整理のために調停を使いやすいものとするため、二〇〇〇(平成一二)年二月から施行されている。現在でも、負債整理のために通常の民事調停を使うことはできるが、取引経過を債権者に開示させたり、給与差押えの停止決定を取るうえで、特定調停のほうが債務者にとって使いやすいので、現在では、多重債務の債務整理に調停を選んだときは、ほとんどすべて特定調停が利用されている。まず簡易裁判所に、債権者一社ごとに一件として債務者が申し立てる(中立書式は裁判所に用意されている)。

すると裁判所から、準備期日や調停期日の連絡があるので、それに応じ出頭し、調停委員が債務者と債権者間の言い分を調整しつつ、調停成立にもっていく。調停が成立すると調停調書を作るが、これは判決と同一の効力を有し、支払がないと強制執行される危険がある。長所としては債務者自身では事実上不可能な債権者との話し合い解決を、この特定調停を使って実現できる機会が得られる。しかし調停委員の能力・カ量・考え方によって、調停内容にはかなりのバラツキがあるようであり、利息制限法引き直し計算、取引経過の開示請求、過払金が発生した事案の処理等につき、不徹底であるなどの指摘がされることがある。

特定調停も調停である以上、当事者間に合意が成立しなければ調停は成立しない。この点は任意整理と同じく特定調停の限界である。また準備(調査)期日、調停期日で時間を相当とられることを覚悟しなければならない。特定調停での分割払水準は、弁護士司法書士による任意整理基準(利息制限法引直後残元本)ないしはそれに調停時までの利息を付加する程度であり、任意整理の場合と同じく、利息制限法引直後残元本を割り込ませることは困難である。多くの弁護士は、「特定調停で達せられることは任意整理で達せられる。期日で長時間拘束されるのはかなわない。合意が債務名義になるのはまずい」という理由で、特定調停を使っていないのが実情であろうと思われるが、事案により、また各地の状況により、有益であれば利用すればよいであろう。

個人再生とは

個人再生は、民事再生法の個人版として二〇〇一(平成一三)年四月から施行されている手続きである。個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類がある。いずれも債務の減免率(逆にいえば弁済率)と分割払方法(三~五年間、三ヵ月に一回以上の分割払い)を定めた再生計画案を作成し、裁判所の認可を得る手続きである。再生計画認可決定が確定すれば、債務がカットされ(最低弁済額は法律で定められており、事案によって異なるが、例えば、利息制限法引直後の負債額七〇〇万円で、保有資産が一四〇万円以下であれば、小規模個人再生では一四〇万円、すなわち負債の二割が最低弁済額であり、債務の八割をカットできる)、その後は再生計画に従った三~五年間の分割払いを完了すれば、債務完済となる。

任意整理と違って、(事案にもよるが、一般的には)負債額を大幅にカットできること、債権カットに同意しない債権者にも強制できること(ただし、小規模個人再生の場合は、法定多数の債権者が不同意だとそうはならないが、現状では、最低弁済額程度の再生計画案であっても、一部の政府系金融機関を除き、債権者の不同意はほとんどない)および住宅ローンを抱えた人は、住宅を維持しながら住宅ローン以外の債権カットの分割払いの債務整理ができることが、最大の特色である。しかし、再生計画認可決定確定となっても、租税等は再生債権ではないのでカットされず、悪意不法行為による損害賠償請求権、故意重過失による人身損害賠償請求権、扶養料等の非減免債権(民再二二九条三項)とよばれる一定の債権もカットされない点に、注意すべきである。

自己破産と違って、資格制限の不利益はない。他方、個人再生を利用できるのは、負債額が五千万円以下(ただし、住宅ローンや別除権で弁済できる額は無制限)の個人債務者に限定されているので、負債額が五千万円を超える人は利用できない。負債額五千万円超の人は、民事再生を利用するのならば、個人再生ではなく通常再生を利用するしかない。通常再生は個人再生と比べて、予納金や弁護士費用が高くなり、債権者から再生計画の同意を取りつけなければならない負担も増す。個人再生は、破産と同様に官報に掲載される。官報公告を見る人はあまりいないが、完全に世の中に秘密裡に債務整理を行いたいという人にとっては、一つの障害となり得る。

多重債務者の債務整理

多重債務者の債務整理の手続きにはいろいろな種類がある。どのような手続きがあるか概観したあと、各手続の特色およびどのような事案にどのような手続きがふさわしいかについて述べる。

1 手続きの種類
多重債務者の債務整理の手続きには、裁判所を利用するものと利用しないものとがある。前者は自己破産、個人再生、特定調停であり、後者は任意整理である。

2 各手続きの特色
(1)自己破産
自己破産は、裁判所を利用した多重債務者の債務整理の基本型であり、現在、最も多用されている。債務者自ら裁判所に破産を申し立て、財産は清算され(破産管財人が資産を換価して、債権者に配当する。しかし換価すべき資産がなければ、清算手続きはしない。現状の多重債務者は、換価すべき資産がないのが大半)、免責許可決定(「支払わなくてよい」という裁判所の決定)を受ける。換価すべき資産を除いては債権者に支払をしないから、経済的負担はそれだけ軽く済み、申立てから手続終了(免責許可決定確定)までの期間は、複雑困難な事案でない限り、四~六ヵ月程度である。

自己破産の長所は、多重債務者にとって、自己の収入の中から債権者への支払をしていく場合に比べ、早く、安く、生活再建の道を歩むことができるようになることである。短所としては、次のようなことがあげられる。破産すると、免責許可決定確定までの期間(前述のとおり、ほとんどは四~六ヵ月程度だが、たまに複雑困難な事件ではこれより長くなることもある)、資格制限のため一定の職業(警備員、生命保険外交員等)につくことができなくなる。保有資産は清算しなければならないので、住宅を手放さなくてはならない。オーバーローンの場合、事案により同時廃止(破産管財人が付かず、破産手続開始決定と同時に、破産手続きが廃止されること)か管財人の財団放棄(破産管財人が、清算対象から除外すること)により、とりあえずは住宅を手放す必要がないことになったとしても、いずれは住宅ローンの抵当権者が抵当権を実行する。

自己破産をすれば、必ず免責許可となるわけではなく、浪費・賭博等の程度が甚だしい等の免責不許可事由(破二五二条一項)があると、免責が不許可となることもある。ただし現状では、この点は裁量免責(同条二項。免責不許可事由があっても、裁判所が裁量で免責許可とする)の運用で、ほとんど救済されている。しかし免責許可になった場合でも、すべての負債の支払を免れるわけではなく、租税等や悪意不法行為による損害賠償請求権、故意重過失による人身損害賠償請求権、扶養料等の非免責債権とよばれる一定の債権(破二五三条一項)の支払は免れることができない。

働く貧困層(ワーキングプア)対策の強化

(1)最低賃金の引上げ
働く貧困層(ワーキングプア)・非正規労働者の待遇改善のために、まず最低賃金制度を見直し、最低賃金を大幅に引き上げることが求められている。しかしながら、現在最低賃金が最も高い東京都でも時給七六六円、最低の宮崎、鹿児島、沖縄県は時給六二七円で、全国の平均は時給七〇三円ということである。一二都道府県の最低賃金は、生活保護水準より低くなっている。日本の最低賃金は、フランスの時給一三〇八円、英国の時給一二七七円などと比べても大きく下回り、先進国では最低水準にある。ワーキング・プアと呼ばれる働く貧困層を減らすためには、少なくとも全国どこでも生活保護基準を上回るように最低賃金を引き上げるようにすべきである。

(2)非正規労働者の待遇改善
非正規労働者の平均年収は、正規労働者の約五割に止まっており、非正規労働者の約八割が年収二○○万円未満に止まっている。基本的に非正規労働者と正規労働者の均等待遇を実現する同一労働同一賃金制度の確立が求められている。

(3)派遣労働の規制強化
さらに、非正規労働者の正規労働者化を図る一方で、非正規労働者を増加させる大きな要因となってきた労働者派遣法の規制を強化するなど、労働分野における規制緩和政策を改めさせる必要がある。特に、非人間的な労働形態である日雇い派遣・登録型派遣については、原則禁止させる必要がある。

*利息制限法の制限金利の引下げ
新法の完全施行後は、貸金業者は、利息制限法の制限金利を超える金利での貸付けができなくなる。しかしながら、利息制限法の制限金利(年一五~二〇%)でも、利用者特に低所得層の利用者にとっては、まだまだ高いといわねばならない。基準貸付利率(従来「公定歩合」とされていたもの)が年〇・三%、銀行の普通預金金利か年○・○四%という超低金利時代であることを考えれば、なおさらのことである。利息制限法は、一八七七年(明治一〇年)に制定された法律だが、当初の制限金利は元本一〇〇円未満の場合は年二〇%、元本一〇〇円以上一〇〇〇円未満の場合は年一五%、元本一〇〇〇円以上の場合は年一二%であった。その後、銀行の貸出約定平均金利等が下落したため、一九一九年(大正八年)に改正が行われ、元本一○○円未満の場合は年一五%、元本一〇〇円以上一〇〇〇円未満の場合は年一二%、元本一〇〇〇円以上の場合は年一〇%と制限金利が引き下げられている。

さらに、第二次大戦後の混乱期に物価や銀行の貸出約定平均金利等が上昇したため、一九五四年(昭和二九年)に改正され、元本一〇万円未満の場合は年二〇%、元本一〇万円以上一〇〇万円未満の場合は年一八%、元本一〇〇万円以上の場合は年一五%と金額区分が変更されるとともに制限金利引き上げられている。この時の利息制限法の制限金利が現在も続いているのであるが、一九五四年当時の銀行の貸出約定平均金利は年九・〇八%であったが、現在の銀行貸出約定平均金利は年一・七五六%(二〇〇九年四月現在)であり極めて低い水準となっているので、利息制限法の制限金利の引き下げも検討されるべき情勢になっているといえる。